みなさん、こんにちは!
「監督が怒ってはいけない大会」の吉武です。
今日のテーマは「怒るのって本当に悪いこと?」です。
「あなたたちが『怒ってはいけない』と言ってるんでしょ!」という声が聞こえてきそうですが…
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スポーツを通じた子どもの成長を
考えるためのニュースレター #6
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実際のところ、子どもが悪いことをしたら、怒ることもありますよね?
「怒る・叱る=しつけ=親の責務・役割」という考え方もあるでしょう。
先生やコーチに対して、「うちの子には厳しくしてください」「ミスしたら叱りつけてやってください」なんておっしゃる保護者の方も、まだいらっしゃるのではないでしょうか。
それでは、みなさんは最近、どのようなことで子どもに怒りましたか?
あるいは、以下のようなことがあったとき、あなたは子どもに対して怒りますか?
1) 宿題をやっていなかった
2) テストの点数が悪かった
3) 夕飯までに帰ってくるはずだったのに、帰宅が遅くなった
4) 次の日朝早いのに、夜遅くまでゲームに夢中になっている
5) ゴール前の簡単なシュートを外した
6) ディフェンスに戻らない
実はこれ、全部うちの子です。。。
まあ、怒りますよね。
全部において。
子どもが悪いことをしたとき、怒ったり、叱ったりするのは、良いことだろうか? 悪いことだろうか?
でも、スペインでプロのサッカーコーチとして活躍され、2022年までJリーグの常勤理事をされていた佐伯夕利子氏はこう言います。
“人の言動は、大きく次の3つに分類できる。
A. attitude
→アティチュード:姿勢、態度、取り組み方
B. aptitude
→アプティチュード:適性、才能、スキル
C. being
→ビーイング:存在、ありよう
指導者が叱るべき対象は、A. の「手を抜く」「ずるをする」といった「選手の取り組み姿勢」にだけである。
「B. 選手の適正や能力」に対する叱責(役立たず、下手くそ、など)、「C. 選手の存在そのものを否定するような言動」に対する叱責(死ね、消えろ、やめちまえ、など)はあってはならない。”
なぜなら、BもCも本人に悪意はないわけですし、怒ろうが、叱ろうが、改善はしないからです。
「でも、厳しく怒れば、言うとおりに練習するようになるから、上手くなるのでは?」
そういう意見もあるかもしれません。
それはその通りです。
でも、それはあくまで、恐怖で子どもを支配しようとする方法。
短期的な成果は出るでしょう。
しかし、その子はスポーツを楽しむことよりも、上手くなることよりも、「怒られないこと」を優先する傾向が強くなります。
スポーツが好きでなくなり、自信を失って自己肯定感が下がり、指導者の顔色をうかがうようになります。
結果として、「主体性」や「自分で考えて工夫する力」も失われていくでしょう。
長期的な点では、特に人間性において、マイナスが大きいのです。
心理学に基づいたポジティブコーチングの考え方では、取り組む態度や姿勢に問題がある場合のみ、叱っても良いとされる。うまくできないことを頭ごなしに怒るのは、恐怖で支配するだけであり、長期的な成長には結びつかない。
そう考えると、です。
冒頭の「テストの点が悪かった」「シュートを外した」は怒っても、叱ってもいけないケースです。
※補足:A.の取り組む姿勢が悪く、その結果として「テストの点が悪かった」「シュートを外した」のであれば、そこを叱る余地はあるかもしれません。授業で騒いでいて内容を理解していない、ふざけてプレーしていてシュートを外した、というようなケースです。
他のケースも、叱るにしても、A.の「態度」の問題なのか、B.の「能力」の問題なのかを見定めた上で、言葉を選ぶ必要がありそうです。
ディフェンスに戻らないという場合、やるべきと分かっていても、サボってやらなかったのなら「態度」の問題です。
でも、戻るべきシーンとは認識していなかった、戻りたいけど体力が限界だったのなら「能力」の問題だからです。
頭ごなしに怒るよりも、どう判断すべきなのか、どう体力をつけていくかを一緒に考えるべきなのでしょう。
※補足: 小学生年代では、走り込みなどで体力をつけることは疑問視されています。個人にもよりますが、この年代ではまだ効果が小さい、サッカーが嫌いになる・バーンアウト、スポーツ障害・オーバーユースのリスクがあるからです。
このように、佐伯さんの言葉、スポーツだけではなく、勉強や習い事でも同じことが言えそうです。
更には、大人同士でも職場や家庭内での関係でも、参考になる点は多いように思います。
Jリーグのnoteに原文が掲載されていますので、リンクを貼っておきますね。
他にもとても為になることが書いてありますので、ぜひ読んでみてください!