みなさん、こんにちは!
「監督が怒ってはいけない大会」の吉武です。
今日のテーマは「子どものモチベーション」についてです。
お子さんのやる気スイッチを見つけるのに苦労していませんか?
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スポーツを通じた子どもの成長を
考えるためのニュースレター #7
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昨日は、「怒ってはいけない」話をしました。
「じゃあ、怒らないで、どうすればよいの?」と思った方も多いのではないでしょうか。
今日ご紹介したいのは、スタンフォード大学発祥の、アメリカで普及する「ダブル・ゴール・コーチング」です。
勝利至上主義を否定し、「怒り」を使わずに、前向きな声掛けを行う指導法は広く「ポジティブコーチング」と呼ばれます。
そのひとつですが、「勝利」と「人間的成長」の両方を追い求めることから、「ダブル・ゴール・コーチング」と名付けられました。
このメソッドでは、選手の心の中にある「感情のタンク」をイメージするのが良いとしています。
英語でEmotional Tank、略して「E-Tank」と呼んでいます。
この「E-Tank」が満たされていると、活力・自信・意欲が高く、実力を十分に発揮できます。
練習に集中し、コーチの言うことを受け入れ、主体的に取り組める状態です。
逆に、このE-Tankが枯渇すると、イライラし、自信やモチベーションが低く、本来の力が出せなくなります。
この図のようなモチベーションに関わる感情のタンクが、子どもたちの心の中にあることをイメージすると分かりやすい。
では、どうすれば、このE-Tankを満たすことができるのでしょうか?
その方法として、「褒める」「認める」「話を聞く」「感謝を伝える」などが挙げられます。
また、言葉でなくても、コーチも一緒に楽しむ、笑顔やポジティブなジェスチャーで接する、などの非言語的な方法でも、E-Tankを満たすことは可能です。
そして、褒めるのにもコツがあります。
「いいね」「すごい」と言うばかりで、表面的だとあまり効果はありません。
時に嘘っぽく響いてしまい、逆効果になることがあるので、気をつけましょう。
ポイントは、良いプレーや姿勢に気づいて、具体的に褒めること。
「ナイスゴール!よくゴール前につめていた。練習でも意識していることが、得点につながったな!」
「ナイスセンタリング!よくワイドに開いていたし、うまくスペースを使えていたな。しかも左足じゃないか!逆足いつも練習していたもんな!」
こんな具合です。
このE-Tankの考え方は、心理学に基づいています。ここでは子どもにフォーカスして書いていますが、大人のモチベーションについても同じことが言えます。仕事や家庭内でも活用できるのではないでしょうか?
逆に、「怒る」「叱る」「指摘する」「教える」「横柄な態度」「ネガティブな表情」は、E-Tankを枯渇させてしまいます。
「え、教えることも?」と思いませんでしたか?
そうなんです。
コーチ(あるいは親)との関係性にもよりますが、「教える」ということだけでも、E-Tankは減ってしまいます。
「怒る」と減り幅は大きい、「教える」はちょっとだけ減る、というイメージです。
ここで言いたいのは、「教えるな」ということではありません。
指導者ですから、当然、アドバイスは必要です。
大事なのは、子どもたちの様子や表情をよく観察し、E-Tankの具合を見極めて、「満たす」「減らす」のバランスをとることです。
E-Tankのレベルが低いときは、いくら教えても、選手は心の中では聞き流している可能性が高いというわけです。
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さて、みなさまの日常の指導方法、この「満たす」「減らす」の比率はどれくらいですか?
「ダブル・ゴール・コーチング」では、この満たす・減らすのベストバランスを「5:1」としています。
ですが、これは、かなり難しいことなのではないでしょうか。
事実、アメリカの指導者も難しいと言っています。
ことさら日本では、文化・習慣が違いますから、より困難でしょう。
普段、「怒ってばかりいるなあ」という指導者の方は、まずは「1:1」を目指して、だんだん「満たす」方を増やしていってみてはいかがでしょうか。